INSPIRYが雑誌<自販機販売Views>に連載-コード決済の誕生および応用 自販機キャッシュレス化へ(1)

 今年3月より、自販機業界の専門雑誌である<自販機販売Views>に中国キャッシュレス支払いの事情及び弊社業務内容は連載し始まっています。

 WeChatが「紅包[1]」機能をリリースしたことで、2014年春節前後の一週間で3000万のユーザーが銀行口座をWeChat Payに紐付けし、またたく間にAlipayの10年の努力に追いつきました。

 WeChat Payの出現で、瞬く間にユーザーを獲得したことで、Alipayはかつてない危機感をおぼえ、同時にパソコンからスマートフォンに決済手段をシフトしました。スマートフォンで手軽な決済手段の普及により、今後二次元コード決済方式が拡がってくると認識しました。こうして、新勢力の「WeChat Pay」と電子商取引の覇者「Alipay」は、よりスピーディーな決済市場を奪取しようと心血を注ぎ、短期間のうちに二強による争奪戦の様相を呈することになったのです。

図1:AlipayとWeChat Pay

二強誕生とスマート決済の浸透

 二強による争奪戦が繰り広げられるのにともない、決済の安全性および大容量情報の高速伝送を保証するため、二次元コードの役割が日増しに顕在化していきます。

 新しいスタイルの出現は、常にリスクとチャンスをもたらすものです。この全く新しい決済スタイルには、MPM[2]方式における二次元コードの盗用、二次元コードラベルの不正な改竄・毀損、消費者の支払いミスおよび事業者の確認漏れによる売上損失などのリスクが含まれます。こうしたリスクに対し、この決済スタイルは、リスクをはるかに上回るチャンスをもたらします。

 「中国二次元コードの父」王越氏がCEOを務めるINSPIRYは、このイノベーションのうねりの中、10年以上にわたって二次元コードの技術開発・蓄積に専念し、新しい決済スタイルのもとで事業者と消費者が直面する問題にねらいを定め、いち早く事業者・消費者の双方に、より迅速で安全な決済方法を実現させることのできるCPM[3]方式の二次元コードリーダー「SmartBox」をリリースし、その安定した品質、素早く正確な読み取り、強力な供給能力によって、たちまち市場を席巻しました。さまざまな業界の既存のPOS端末のモデルチェンジと二次元コード読取りの機能を提供しました。

図2:KFC店舗のスマートボックス
図3:スーパーレジのスマートボックス
図4:病院会計のスマートボックス

WeChat 「紅包」が急速に受け入れられたわけ

 なぜWeChatの「紅包」は、またたく間にAlipayが10年近く独占していた電子決済市場に食い込むことができたのでしょう?

 その主な理由は、ソーシャルアプリと決済機能を紐付けることで、これまでの決済手段を極限まで簡素化したからです。この決済手段が急速に普及した背景には、中国人にとって最も重要な、中国の伝統的祝日である「春節」が関係しています。2000年以降、中国の都市化が急速に進むにしたがって、従来の大家族での生活から、しだいに遠距離で核家族が生活するスタイルへと変化しました。春節になると、年長者が目下の人にお年玉を渡すことが、これまでずっと春節の最も重要な儀式でしたが、遠距離かつ核家族化の進行により、このしきたりも少しずつ風化していました。WeChatの「紅包」の出現で、この伝統的祝日にこの儀式が戻ってきました。「紅包」機能が遠く離れた家族のつながりを活発にしたのです。こうして「紅包」機能はさまざまな世代のユーザーに急速に受け入れられ、高い評価を得ました。

 中国最大の電子決済事業者であるAlipayは、モバイル決済の急速な拡がりを認識すると、長年蓄積してきたユーザーをたのみに、すばやくWeChat Payとの争奪戦の構えをとりました。以下のビジネスモデルは、このスピード決済をベースに、またたく間に出現したものです。

 既存のタクシー会社に大きなショックを与えた配車サービス「滴滴(DiDi[4])」、伝統的ファストフードである「インスタントラーメン」などに衝撃を与えたフードデリバリー「美団外売[5]」、多くの都市住民の日常の移動をエコで便利なものにするシェアサイクルなど。これらの新しいビジネスモデルは、どれも二次元コード決済という、早くて、安全で、便利な新しい決済スタイルと切り離すことができません。二次元コード決済と何の関係があるのか、疑問に思う読者もおられることでしょう。

 まず、二大決済事業者は、ユーザーエクスペリエンスを素早く推進し、より多くのシェアを獲得するため、二次元コード決済を活用したビジネスモデルに着目し、ユーザーに初期段階で強力なインセンティブを提供しました。

  1. Alipayは5年がかりの中国キャッシュレス社会の促進を打ち出し、積極的に地方政府と協力し、杭州、天津、武漢、福州などの都市において、率先して生活サービス領域のモバイル決済を普及させ、「キャッシュレスシティ」の建設を促進するとともに、交通、医療、教育、社会保険などの領域のキャッシュレス化を着実に実現しています。
  2. Alipayオフライン決済では各種キャンペーンを展開し、普及を促進しました。「スキャンですぐに最大4888元オフ」、「スキャン支払いでバス3日間無料」、「当日2回目、3回目、4回目の支払いで賞金が当たる抽選に参加」、「12/12は1回の購入金額100元で50元オフ」。
  3. WeChatは8月8日を「キャッシュレスデー」とし、巨額の資金を投じてインセンティブ、金券、クーポンなどの形でキャッシュレスデーの活動を促進。
  4. WeChatオフライン決済では各種キャンペーンを展開し、普及を促進しました。「10元払うと10元オフ」、「火曜日はWeChat Payデー」、「金曜日は50元で5元オフ」、ランダム割引など。

二次元コード決済が中国のさまざまな場所で浸透するのにしたがって、従来型金融システムの代表である「銀行」などでも、しだいに二次元コード決済が導入されるようになりました。二次元コード決済の中で最も手軽で安全なCPM方式が都市生活サービスのさまざまな領域において採用されています。INSPIRYもこの二次元コード決済は追い風に乗り、成長を続け、東南アジアに向けて邁進しました。(続き)

  • [1] 紅包とは、中国伝統的な習慣の一つです。結婚式、卒業式、赤ちゃんの誕生、正月などの特別な機会に赤い袋で現金を包んで贈られる金銭的な贈り物です。
  • [2]  MPMとはMerchant‐Presented Modeの略で、店舗側が提示する二次元コードを顧客が読み取る方式です。
  • [3] CPMとはConsumer‐Presented Modeの略で、顧客のスマホなどで提示した二次元コードを店舗側の決済端末(POS、タブレットなど)を使って読み取る方式です。
  • [4] 滴滴(DiDi)とは、タクシー、ヒッチハイク、自転車シェアアプリなど、世界中で幅広い交通手段を提供する、世界最大級の交通プラットフォームです。日本では現在タクシー配車プラットフォームのみ提供しています。
  • [5] 美団外売とは、スマートフォンと電子決済を活用したデリバリーサービスです。